ミクロ経済学 学習ロードマップ
「経済学をやってみたいんだけど,なにかいい本を教えてくれない?」
この言葉を聞くようになってから2年程度が経過しました.
この質問をしている人には2つのタイプがあります.
1つ目のタイプは,経済ニュースを分かるようになりたいっていう人です.
こういうときは,僕自身あまり経済政策やら景気やらの話をするのは得意ではなく,適当に答えてしまうことを恐れてしまって困ってしまいます.
しかしオススメしないわけにもいかないので,そのときは質問者の興味にあった本を紹介することにしています.
2つ目のタイプは,経済理論をきちんと勉強したいという人です.
もちろん経済政策やら景気やらに興味があって,それを理論的に強固な形で知りたい,という人もこの集合に含まれます.
色々と考え方はありますが,こういう人に対して,僕はまず,簡単な「ミクロ経済学」の理論を一度集中的に勉強することを強く奨めています.
様々な経済学の議論の背後には,例外なく学部一回生から学ぶミクロ経済学の基礎理論が存在します.
また実際,現代的なマクロ経済学はミクロ経済学的基礎を背後に持つわけですし,そういった方向に興味がある人も,ミクロ経済学の理論を学ぶことは,長い目で見て大いに有効であると思います.
(あと僕自身があまりマクロ経済学を知らないから,という裏の事情もあったりします)
一言で「ミクロ経済学」と言っても,テキストの数は数多あり,どれを初めに取ればいいのかが分からないと思います.
僕もそうでした.
しかし一応は,僕の中での定番テキストも決まってきているのも事実です.
そこで以下ではミクロ経済学の学習法に関する簡単な議論も交えながら,そのテキストを紹介します.短く.
というより僕のやってきたことを書きます.
時間があれば今度マクロ経済学についても書くかも.
(でも僕マクロほとんど勉強してないや.)
なお対象者は「本当に何も知らない人」から,です.
もちろん分かる人は途中からやればいいと思います.
* * *
▼一番最初のレベル
さて,まずミクロ経済学って何をやっているのかということを知ることが必要です.
僕の大学でははB1後期に「ミクロ経済学入門」という講義があります.
そこで初めて経済学に触れたのですが,正直何がなんだかさっぱりわかりませんでした.
何が偏微分やねん.
とにかく限界代替率とか限界費用とか,そういう単語レベルから分からなくて,経済学の骨格すらつかめないままでした.
(今でも「つかめた!」って自信は無い...)
このまま嫌いになっちゃうパターンも,多々あると思います.
何が偏微分やねん.
でも,骨格がわかってしまえばなんとかなるものです.
僕自身は,その時は,荒療治的な何かというか,無理やり後述の「武隈ミクロ」を脳内にインストールして乗り切りましたが,後になって色々と生協の書店で教科書を見ていると結構いい本を見つけたので買っちゃいました.
木暮太一「落ちこぼれでもわかるミクロ経済学の本―初心者のための入門書の入門」
なんだか簡単そうに見えるし,実際ページをめくれば簡単なのですけど,ミクロ経済学の抽象的でわかりにくいかなとおもうところを,簡単な例を用いて説明してくれています.
(なんか噂で聞きましたがどこかの大学のミクロ経済学入門の教科書になってたらしいです.)
もちろんこれだけでミクロ経済学を終わらせた,と言うことは出来ません.
しかし1週間(で,読める.その気になれば3日で読める.)の時間をかけてこれを読めば,間違いなく後のレベルにおいて本格的に学習するときのとっかかりにはなってくれると思います.
あ,もちろんこのレベルなら分かるっていう人は,必ずしも読む必要は無いテキストです.
▼入門レベル
ざっと脳内の「環境整備」が終わったならば,いよいよ入門編です.
とは言うものの,入門的な教科書は正直な話,どれを読んでも結構一緒かなと思います.
強いて言うなら,ざっと目を通しただけですが,
荒井一博「ファンダメンタル ミクロ経済学」
がいいかな,と思います.
具体的な書名を挙げるのは避けますが,「経済学の理論」を学ぼうとしているのであるのならば,「ビジネスに応用できる!」とか「現実の話題が沢山!」とかの謳い文句の本はあまりおすすめしません.
もちろんビジネスに応用するために経済学を学ぶ人にとっては,この上ない近道なのでしょうが,今議論している話は,それとはちょっと違います.
この辺りから数式やグラフの抽象的な扱い方に慣れるために,良い意味でストレスを感じてそれに慣れるのがいいと思います.
しかしこれだけだとお叱りの言葉が飛んできそうなので,ここで学習法についての補足をしておきます.
これに関しても色々と議論はあるのでしょうが,経済学の学習には
「計算」と「自分でグラフを動かす作業」
が必要にして不可欠であると,僕は信じています.
数式の流れだけを追っても,理解には繋がりません.
必ず一度自分で導出してみるべきです.
また同様の議論がグラフに関する議論でも成り立ちます.
例えばとあるグラフがシフトした場合,どのような変化が起こりえるのかということは,自分で実際にグラフを動かしてみなければ深く理解できません.
その上で要求されるのは,「数式の直観的な解釈の作業」です.
これは余談になるかも知れないのですが,僕は経済学の楽しみの1つとして,この「数式の直観的な解釈の作業」があると思っています.
経済学の数式一つ一つは生きています.
いやそれは言い過ぎ.
でも生きているまでは言いませんが,一つ一つが意味を持っているということは確かです.
ここに具体例を挙げるのは避けますが,出てきた数式が「一体どうしてこの形になるのか」ということや,「この理論を現実に適用することはできるのか」,「結局この数式ってどういう意味なのか」を解釈する作業により理論のより深い理解に繋がります.もちろん,楽しい作業です.
逆に言えばこの作業をしなければ,経済学は「ただの微分してゼロと置く作業」になってしまいます.
最初は難しいですし,何がなんだか分からないのですが,教科書には「この数式の直観的意味は〜ということである」と説明してくれているものもありますので,だんだんと慣れていくと思います.
従ってこれは人それぞれなのでしょうが,教科書を丸写しまでとは言わねど,内容を自分でまとめてノートに自分の言葉で書いてみる作業も,効果的です.
(僕は今でもよくやってます.)
▼中級レベル?
入門的な教科書を終われば,中級レベルに進みます.ここが一番大事です.
このレベルには定番と呼ばれる本が2冊存在しており,実際これをやれば「学部でやるミクロ経済学」はオールオッケーなのです.
公務員試験とかもこのレベルじゃないかな?わかんないけど.
まずは,「荒井ミクロ」です.
荒井一博「ミクロ経済理論」
その記述がわかりやすいのももちろんのこと,特筆すべきは巻末の「数学補論」です.
この数学補論で,ある程度の数学の紹介がなされており,これを読めば簡単な数学的手法の直観的な理解が出来るようになります.
特に凸集合とか全微分とかの説明がよかったです.当時B2でしたが,するっと簡単に理解できました.
次におすすめするのは定番である「武隈ミクロ」です.
定番中の定番なので,見たことがある人も多いと思います.
僕は,これから始めました.ちょっと疲れましたけど,集中的にやるなら,これより簡単なレベルをすっ飛ばしてこれから始めても大丈夫かな?と実感があります.
これも有名ですが,演習書も出ています.
多分,経済学やってる人は,みんな持ってて一度は解いたことがあるんじゃない?
クールな記述で分かりやすく,「まさにミクロ経済学!」っていう感じのテキストです.
僕はこの本のお陰で経済学慣れをすることが出来ました.
しかし残念ながらラグランジュの未定乗数法に関する話が全くないということ,あとこの本は結構古い本でして,「ゲーム理論」に関する記述がちょっと少なくなっています.
これは痛い.
ですので,武隈ミクロのみで回すのならば,「武藤ゲーム」は必須であると思います.
武藤滋夫「ゲーム理論入門」
なにより安いのもいいですね.
僕がゲーム理論に初めて触れたのは,この本でした.
ゲームやりたいんですけど!って言われたら僕はまずこの本を紹介しています.
ロジカルに進行する議論によってゲーム理論の魅力が伝わってきます.
難点は哀しいかな,新書サイズなので利得表などが読みにくいところです.
あと,この本,「入門」と書いてありますが,後半は「入門」ではなくなってきますw
さて,話は戻りまして次は定番「奥野ミクロ」です.
奥野正寛「ミクロ経済学」
僕はこの「奥野ミクロ」を一番お勧めします.
とにかくわかりやすい.さらに面白い.最先端の研究の紹介までやっちゃう.
数学に関する補論も,出てきたその都度なされるので通読がストップしません.
またゲーム理論に関する記述に紙面の半分を割いていますので,実はコレ一冊でなんとかなっちゃう,みたいな感じなのです.
何週読んだんだろって位読みました.
またこれの演習書がまた良いです.
初歩の数学から始めてくれて,まず最初にラグランジュの未定乗数法に慣れることができます.
中で扱われている問題数は少ないですが,その一つ一つが「理論を理解できるような問題」になっていて,良い感じです.
「何でもかんでもラグランジュ関数編んでも解けないよ!」って声が聞こえてきました.
このあたり,武隈ミクロの演習書とは違います.
武隈ミクロの演習書は数値計算が主で,言うなれば「微分してゼロとおけば解けちゃう」のですが,そういう問題は奥野ミクロの演習書には無いです.
僕はコレを5週程度回したと思います.面白かったし.
▼上級?
この辺りになってくると僕もよく分からない,というかそもそも紹介しなくても自分で探して読むことができるでしょうから,あまり紹介することは出来ません.
しかし皆やってるなーって感じでよく見るのは
奥野・鈴村「ミクロ経済学」
岡田章「ゲーム理論」
(新版が出るのか...買おうかな...うーん...)
この辺りです.西村ミクロやってる人もたまに見ます.
あとマスコレル?
これは今やってます.
重い.難しい.分厚い.死ぬ.難しい.怖い.死ぬ.
▼まとめとそのほか
以上,「ミクロ経済学学習ロードマップ」をざっとまとめてみました.
この雑文が,多くの方の学習のご参考になれば幸いです.
大切なことは,どの本も歯ごたえがあってやるのは疲れるけれど,一周だけじゃなくて何週も何週も繰り返してやることです.
とにかく辛さの後に慣れがきて,そして楽しさが来て,やっぱり辛いかなと思いながらもちょっと楽しいのが,この分野なのかなと,最近思っています.
決して楽しいばかりではないですが,まずは楽しくなるくらいまでやってみることを強くお勧めします!
京都大学大学院 経済学研究科 大学院入試にどのように立ち向かうのか
大学院入試は学部入試(いわゆる大学受験)と違って,出ている情報が少なく,一体何から手をつけていいのかが分からないと思います.
もちろん僕もそうでした.しかし合格して振り返って見るに,根気よく対策さえすれば,誰でも合格することができる試験であることも事実です.
そこで今回は大学院入試にどのように立ち向かうのかということをメインに書きます.
しかし注意していただきたいのは,僕が受験したのは京都大学大学院経済学研究科だけであり,それ以外の大学院入試に関しては,全くわからないということです.
というわけで,大学院入試にどのように立ち向かうのかということをメインにとは言いましたが,実際のところそうではなくて,もっとスペシフィックに,
「京都大学大学院 経済学研究科 大学院入試にどのように立ち向かうのか」
という内容になります.この点ご了承ください.
* * *
▼受験科目選択に関して
京大の経済学研究科の入試の受験科目は
1:外国語
英語,独語,仏語,中国語,露語および韓国・朝鮮語の中から1カ国語を選択.
2:専門科目
経済原論,経済史,経済政策,経営学,会計学,経済数学の6科目があり,そのうち4問を解答.ただし,1科目から2問までしか解答できない.
となっています.(詳しくはHPから募集要項を参照してください.)
外国語に関しては,ほぼすべての人が英語一択でしょう.
(もちろんこれらの外国語のうちの一つが抜群にできるならば,他の外国語の選択肢もあり得ると思います.)
問題は専門科目です.
おすすめの受験科目は,
のセットです.多くの人がこのセットのような気がします.もちろん僕もこのセットでした.
このセットの科目では出る範囲がある程度限られている以上,ほぼノータッチからの学習でも,これらは比較的対策がしやすいと思います.
裏を返せば他の科目は対策がし辛い科目であると言えます.
何よりも「何が出るのかさっぱりわからない」わけです.
もちろん他の科目を集中的に研究するゼミに所属している人は,それを受験するべきでしょうが,ノータッチからの学習ならば,リターンに対して高すぎるリスクをテイクすることを推奨しません.
大博打に出るよりは,必死で勉強すれば確実に点が取れるであろう,「ミクロ経済学・マクロ経済学・経済数学・統計学及び計量経済学」を受験することを,強くお勧めします.
ちなみに,難易度に関しては,個人的な主観ですと
ミクロ経済学:定期テストに毛が生えた程度.国家一種試験よりは明らかに難しい.
マクロ経済学:^q^<やめてください しんでしまいます
経済数学:その気になれば高校生でも解ける超楽勝サービス科目.行列の足し算とかやらされちゃう.
統計学,及び計量経済学:対策をすればとても簡単な科目.
という具合です.
個別の科目に関する具体的な対策については,また以下で触れます.
▼準備期間に関して
大学院に進学しようとしているのですから,ある程度は学部において学習してきているはずです.
最低でもミクロ・マクロの用語や計算問題,何をやっているのかくらいは大体分かっているかと思います.
以下はこの前提のもとに議論を進めます.
極端な話をすれば,院試の準備期間は1ヶ月半で事足りると思います.
しかしこれだと精神的に相当キツイものがあるので,大体4ヶ月程度を確保する計画をお勧めします.僕自身も院試の準備にかけた期間は4ヶ月程度,つまりB4の5月上旬に学習をスタートさせました.
4ヶ月程度あれば,ほぼノータッチの分野があったとしても,無理なく本番にアプローチできると思います.
(それでもやはり相当に精神的にキツく,また本当に「無理なく」と言っていいものかは分かりませんが...)
初期に何かをしろとか,最後の一ヶ月に何かをしろとか,そういうのは書く意味が無いので書きません.
この計画は自分自身で立てるのが最適です.
しかしあくまで参考として僕自身のやったことを上げると,
5月:ミクロをさらっとやりながらあんまり知らない線形代数を勉強する.
6月:統計・計量集中期間ということで,テキストをひたすらノートにまとめる.
7月:マクロをチラチラ見ながらミクロを集中的にやり直す.統計・計量の問題も解く
8月:経済数学を思い出しながら全科目修羅の刻へと至る.過去問を解きまくる.
(英語は全期間コンスタンスにやってました.論文読んだり教科書の原著読んだりも.)
って感じです.
(ついでに言うと8月はツイ禁してました.)
▼過去問に関して
HPには過去4年分の専門科目の問題がアップロードされていますので,これは楽に手に入るでしょう.
問題は,これ以前の専門科目の過去問と,英語の過去問です.
専門科目は過去の問題と現在の問題では難易度に乖離があります.
ちょっと前のに出てた,厚生経済学の第二定理を証明せよとかはもう多分言われません.無理.無茶言うな.
という訳で,そこまで過去の問題にこだわる必要はないと思います.
(もちろん余力があればやればいいのですが...)
だから,最優先で見つけるべきは英語の問題です.
英語の問題はHPでも公開されておらず,京大の教務課での閲覧となります.
残念ながらコピーは不可との規定がありますので,以前受験した人から過去問をコピーさせて頂く等しなければ,過去問で演習をすることができません.
しかし結構周りに過去問を持ってる先輩がいらっしゃるものです.
何としてでも探し出して,一度解いてみることを強くお勧めします.
▼各科目に関する具体的な対策
1:ミクロ経済学
京大のミクロ経済学の問題では「一般均衡理論」「簡単なゲーム理論」「簡単な契約理論」が頻出です.
大体,ここから2問出題されます.(24年度の問題では少し感じが変わって,とても簡単な消費者理論と,公共経済学的な問題が出ました.ちょっとびっくり.一箇所解けなかった.ちょー悔しい.)
もちろん学部で使用するようなテキストは暗記するレベルでやるべきですが,これらの範囲を中心に学習すれば効率的な学習が可能だと思います.
上でも書きましたが,問題が問うている内容自体はそんなに難しいものではありません.京大経済学部の定期テストに毛が生えた程度の問題です(国家一種よりは明らかに難しいです).
また,2問中1問はとても簡単な問題が出題されるので,これは正解するべきだと思います.これを取らなければ多分落ちます.
しかし計算が異常に煩雑な年が結構あるので,それには要注意です.
また,これはマクロにも共通することですが,何でもかんでもラグランジュの未定乗数法を使って解いてはいけません.最悪死にます.
過去の問題でも多く出ていますが,効用関数の形状によっては,端点解が答えになることも十分にありえます.
最適化とは何かということを常に意識しながらやるべきです.
使ってもいいか悪いかをきちんと判断した上で,ラグランジュの未定乗数法は使用するべきです.
さて,メインテキストは,おなじみ「奥野ミクロ」です.
奥野ミクロのテキストと,この本の演習書を繰り返し繰り返しやるのが良いです.僕は演習書を5週解きました.(院試対策を始める以前から解いてたから,実際はもっと解いてるかも.それくらい良い演習書です.)
基本的にミクロはこれだけで事足りると思います.全文暗記し,全ての数式に経済学的インプリケーションを与える覚悟でやれば,必ず結果はついてきます.最高のテキストと演習書です.絶対にやるべきです.
しかし双対性に関する記述に弱く,その点に関しては何か他のテキストで補う必要があります.
僕はこれまたおなじみ「武隈ミクロ」で補いました.
「院試対策」として定番の「武隈ミクロ」とその演習書ですが,双対性に関する部分以外はやる必要があまりないと思います.
数値計算ばかりで,解いているうちに結局何をやっているのかを見失います.あと計算ミスでメンタルがバッキバキに折れちゃいます.これ結構マジで.
個人的には,武隈ミクロの演習書をやるならば,奥野ミクロの演習書をじっくりと一問一問,時間をかけて何度も何度も解いて,完璧に仕上げるべきかなと思います.
2:マクロ経済学
正直なところ対策のしようが無いと言うか,今まで学部でやってきた学習の成果を発揮して,その場で即応するしかない科目だと思います.
過去問を見れば異常に難しい年があることに気がつくでしょう.
過去問を見ていて特にやっておくべきだと思うのは,「ソローモデル(離散型・連続型の両方)」「マクロ経済の一般均衡モデルたくさん」です.
僕はこれらを中心に学習していました.(24年度は連続ソローと一般均衡がそのまま出てくれて,とてもラッキーでした.)
IS-LMモデルやAD-ASモデルなどのいわゆるケインズ経済学はそのままの形では出ないと思います.
院試対策として読んだテキストは,実はありません.
京大のマクロに関しては,院試のためにテキストやったかやってないかとか,そういう問題じゃないような気がします.
ただ,今まで読んで,よく考えたら院試の役に立ったなと思うテキストは,
「浅子マクロ」
「堀・二神マクロ」
「齊藤先生らのマクロ」
です.
また,
「The ABCs of RBCs」
という本もやってよかったと思います.
とにかく,マクロ経済学のやっていることを,なんとなくでもつかむことが大事です.
これらの本のうちの全部をやる必要はないと思いますが,どれかを読んでみて,ある程度の問題には対応できるような素地を作っておくべきです.
ちなみに,多分とっつきやすいのは「堀・二神マクロ」です.僕は個人的には「浅子マクロ」が大好きです.
☆「連続型ソローモデル」について
普通,学部では習わないので,これに関しては特に対策が必要です.
これは「ローマー」の第1章一択です.
第1章だけでいいから読んでおくことを強くお勧めします.
読んでなかったら運が悪ければマクロ1問目の「微分方程式を導け」で即死します.
3:経済数学
その気になればそのへんの高校生でも解ける超楽勝サービス科目.
行列の足し算とかやらされちゃう.でも計算がとってもめんどくさかったりします.場合分けのめんどくささもストレス溜まる感じでいやらしい.
「行列の対角化」と「線形独立の定義」や「テイラー展開」はちらっと見ておくべきです.
これらに関しては木島先生と岩城先生の「経済と金融工学の基礎数学」を,とある先輩にご紹介いただきましたので,それを使用しました.
読めば分かるようなところや,明らかにオーバーワークでいらないところは飛ばしました.
また僕は線形代数が苦手だったので,石村先生の「やさしく学べる線形代数」の必要そうなところも2週程度テコ入れにやりました.
さらに,前者2つで記述がわかりにくいところは,岡田先生の「経済学・経営学のための数学」で補いました.
特にスモールオーダーに関する部分は岡田先生のテキストにとてもお世話になりました.
集合論に関する問題も頻出です.
これは過去問を見れば,出る証明の種類が少ないことがと分かるはずなので,それを暗記してしまうのがいいかと思います.(大体12種類くらいかな?)
僕は松坂先生の「集合・位相入門」の1・2章を3週やりました.
余談ですが「成り立たない場合を示せ」って問題は,非線形函数引っ張ってくれば一発です.
とりあえずf(x)=x^2+1とか引っ張ってきましょう.多分何とかなります.
これだけやれば経済数学は間違いなく9割は取れると思います.勝負科目です.
4:統計・計量
僕が最も苦手とする科目でした.対策を始めた5月初頭には検定のやり方すら危うい状況でした.
それでも集中的にやればなんとか合格圏に持っていくことができます.
頻出分野は「同時確率」「検定」「検定統計量の不偏性・一致性の証明」です.
最近は統計分野ばかり出ている感じですが,「OLS推定に関する理論」も頻出です.特にBLUEに関する証明がめっちゃ出ます.
僕は,最初に森棟先生らの「統計学」を使用しました.
このテキストの重回帰のところまでを4週やった所で,東京大学出版会の「統計学入門」に切り替えました.
こちらのほうがわかりやすいと思います.初めからこっちやってたほうが良かったかも.
これを2週程度やった後に,定番の「山拓計量」の最初の部分をやっていました.
上でも言いましたが,特に集中的にやったのは「OLS推定に関する理論」です.
OLS推定量はどのようにして求められるのかという話と,その不偏性の証明は10回以上見ました.
この科目は特に暗記せねばならないことが多くて,途中で心が折れそうになりますが,しかし一度わかってしまえば,試験対策はそんなに難しいものでもないということにも気が付きます.
とにかく根気が必要な科目ですが,教科書を何度も何度も読み返せば必ず分かるようになると思います.
5:英語
京大の学部入試の劣化版です.
単語もそこまで難しいものが出るわけでもなく,また,問題自体も変な問題ではなくて,「訳せ」って感じの問題か,全文を要約せよって感じの問題ばっかりです.
内容は経済学っぽい話と経営学っぽい話の,英文が,全部で2問出ます.
(最近は英語の学術論文から一つと,簡単そうなテキストの抜粋から一つ,という感じです.23年度は「もしドラ」に関するエコノミストの記事の要約が出てましたけどw)
日頃から海外のテキストの原著を読んでいる人ならば対策無しでも多分OKです.
ただし,問題の量が多いです.
1時間30分の試験時間の中で,常にペンを動かしていることが求められます.こればっかりは一度時間を計測して感覚をつかむしかないです.
そのためにもなんとしても過去問を手に入れるべきです.
しかし,残念なことに英語の過去問が手に入らない場合もあると思います.
その場合は,同じ京大の「公共政策大学院」の英語の問題が(少し長いですが)似たような問題ですので,それで代用するのがいいでしょう.こちらはHPで公開されています.
(東大や一橋,阪大など他の大学院の英語の問題をやることは,無意味だとは言いませんがあまり点に繋がらない気がします.)これを2問とも書き切ることができれば,合格にぐっと近づきます.(なんでも英語が一番差のつく科目だとか.)
学部入試での遺産をどれだけ温存できているのかにもよる気もするのですが,具体的な対策として,毎日経済学に関する英文を読むことをお勧めします.
僕は論文や教科書の他に,これを暇つぶし程度に読んでいました(結構面白かった).
また,軽視されがちですが,合格したいのならば単語帳は結構重要だと思います.
使っていた単語帳は「京大・学術語彙データベース 基本英単語1110」です.
これの「文理共通」と「文系単語」をやりました.「理系単語」はマニアックすぎて院試には不要です.
レイアウトは最悪ですが,この単語帳は,学術論文のデータベースから引っ張ってきた「論文で使われている英単語」を抜粋して掲載しているので,院試にぴったりでした.
実際とても役に立ったと思います.これやってなかったら自信を持って解答できてなかったかもって所が何箇所かありました.
何週やったか分からないのですけど,通学途中の京阪電車の中ではこの単語帳しか読まないと決めてやってました.
▼まとめとそのほか
以上,「京都大学大学院経済学研究科の院試にどのように立ち向かうのか」をざっとまとめてみました.
この雑文が,多くの方の大学院受験のご参考になれば幸いです.
以上のことをしっかりとやれば,ほぼ確実に合格するのではないでしょうか.
(ちなみに合格ラインは5割程度みたいです.全部解かなくても合格できるのです)
身体的なキツさもあるでしょうが,何よりも院試で大変なのはメンタル面での辛さだと思います.
周りが内定を得ていく中,自分だけが進路を決めていないという現状.過去問を解いてみたときに間違えた絶望.僕も不安で何度もバッキバキに心が折れました.
(マジ死ぬかとおもた.一時は悲しくもないのになぜか涙が止まらなくなった.)
しかし,不安を打ち消してくれたのは,徹底的な学習でした.
落ちたらどうしようと悩んで頭を抱えるのではなくて,落ちないように勉強すると決めて机に向かっていたら,いつの間にか不安は解消されました.
さらに,周りに相談するのも大変有効です.僕は友人たちや,指導教官の先生,先輩方に大変励まして頂きました.
このことにはとても感謝しています.彼らの助言がなければダメだったと思います.
また,ある方に1時間の学習後には部屋から出て10分程度の休憩を挟むことを勧められたのですが,これは非常に効果的でした.
メリハリをつけてすっきりと勉強できました.肩こりもちょっとマシに.
心身の管理は学習と同程度に重要です.
院試はとにかく長く辛い戦いです.しかし冒頭でも書いたとおり,「きちんとやれば合格する正直な試験」でもあります.
頑張ってください.結果は必ずついてくると思います.
アナログな論文管理のすゝめ
あらためましてはじめまして.
Keitaeconです.
さて,ブログをやってみようと思い立ったから,とりあえず開設してみた.ブログを持つのは中学三年生以来で,そういえば当時は「読書感想文ブログ」と称して読書感想文をアップロードしまくっていた.いやそんなことは結構どうでもよくて,これからちゃんと更新するのかどうかは分からないけど,一応ちゃんと続けたいなと思う.
Twitter見てると色々な人がブログを持っていらっしゃって,そこで結構な議論を展開されている.僕も一応は経済学徒であって,経済学のことをブログで「つぶやいて」行きたいなとは思ってるけど,まぁ知識そのものが足りないのでどうなるのかは分からない.でも多分,そんなに面白いネタを供給し続けることは無理なので,経済学方面によっていくと思う.
Twitterでは出来なかったようなポストとかしていけばいいかな.
最初のポストだけで更新断絶とかしちゃいそうだから,適度に手を抜こっと.
(某所にポストしたものの転載です.)
3回生になって論文を読む機会が増えてきた.
おおよそ電子ジャーナルだから,PDFで管理することが多いのだけど,どうも液晶画面で論文を読むのは疲れる. 僕は色々と本気で読むときは,赤鉛筆を使いながら読まないと駄目なタイプだ.液晶画面に赤鉛筆で書き込むわけには行かず,やっぱり重要な論文は印刷して紙媒体で読むことにしている.
そういうわけで,論文をゴキゲンに印刷しまくってたんだけど,早くも限界を迎えた.
こいつを見て欲しい.
おわかりだろうか.
もう限界.
机の上が汚いのはもういい.いくら整理しても3日と経たずに汚くなる.でも,どこに何があるのかがわからない状況,そして管理しなければならないものがバラバラになってしまう可能性を持っている状況,さらには管理すればスマートに管理出来るであろうものが,しっかりと管理されていない状況.これがもう鳥肌が立つ程に我慢ならなひ.
なんとかこれらを管理したいんだけど,生協で売ってる熱着製本キットは1冊160円もするので,さすがにそんなにたくさん買えない.(あ,でも最重要だと思われるものについては絶対に製本キットで製本することにしている.)
だから,これの登場である.
\ドギャーン!/
- 穴あけパンチ
- フラットファイル
- インデックス
これで論文をまとめちまおうという魂胆だ.
-穴あけパンチについて
100均で売ってるけど,それは絶対にやめておいたほうがいい. 穴が開かないし紙が傷つく.穴が開かない穴あけパンチは穴開かないパンチということで,ただのパンチなのである.
開かない穴あけパンチはただのパンチ.タモリさん.これってトリビアになりませんか!?
だから穴あけパンチはコクヨの穴あけパンチを買うべき.なに,これでも400円です. (これより上位機種は800円だ.実は安い.)
- フラットファイル
これまたコクヨだけど,重要な書類を多く束ねる場合は,紙製のフラットファイルはやめたほうがいい.
もちろん強度の問題で.ヨレヨレになるよ.僕が買ってきたのは軟性プラタイプのフラットファイルだ.
- インデックス
実はこう言う時には重要だ.論文とかをまとめてしまう時に,どこに行ったのかがわからない状況が最悪.でも問題なのは,インデックスは結構高いということ.これで260円もしよったのには驚きだ.ああ,あとまぁまた違うインデックスについても買っt
ああ,僕実は文房具大好きなんですよ.
さていよいよファイリングだ.
こんな感じでどんどん穴をあけてファイリングしていく.
もちろんインデックスも忘れない.
どんどんと穴をあけるのだが,この穴あけの作業が楽しいと思うか,苦痛であるかは,人によって様々である.ちなみに僕にとってこの時間は至福の時である.
そしていよいよ完成だ.
…あれ,ダサひ.表紙がタンパクすぎて面白くない.そこでこの表紙の登場である.
どう見ても人類補完計画だけど,これで格好はついたと思う.
次は外だ.
こんな感じ.外に関してやってる途中で,これが一巻だということに気がついたから,中の表紙も変えることにした.
こんなん.
そんなこんなで,結構満足のいく出来になったのである.
もちろん全てじゃないけど,論文は出来る限り印刷して読んだほうがいいかなぁ.でもそれは,印刷してホッチキスでとめて,放ったらかしにはしてはならないと思う.無くす. しっかりとファイリングして管理するべきだろう.
あ,もちろんアナログではこう言う管理の仕方だけど,デジタルな方向,つまりPC上のPDFは,BibTeXとかに対応した文献管理ソフトを使うのがオススメ!
デジタルな方向の文献管理についてはまたいつか!